天童 荒太「悼む人」

1年ぶりぐらいに舞台が現代の作品を読んだ。
SFやファンタジーと違って、題材が身近なのでぐっと来るものがある。

悼む人

悼む人

読んでいる間はそれほど違和感を感じなかった「悼む人」の行動も、しばらくしてから考えると改めて「気持ちわるい」と思った。自分の家族が不慮の事故で死んだとして、まったく知らない他人が悼むのを許せるかどうか・・・多分、許せないと思う。何も知らない人にそんなことをされるのは、耐えられない。

普通は、家族の死ですら忘れていくのが当たり前なのに、他人の死まで覚えていようとする主人公。「病気のようなものだと思ってください」といっているが、どこからどう見ても心の病気。人の死なんて、覚えていていいことがあるのだろうか?

ただ、誰にも知られずに死んでいく人がいて、その人が昔は愛する人たちに囲まれて、感謝されていたのかと思うと、やるせない気持ちになるのはわかる。子供のころはそういうことを考えて一晩中悩んだこともあったかもしれない。今では思い出せないが・・・