コニー・ウィリス「犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」

人に安心して進められる一作。

ディテールが非常に細かい。ヴィクトリア朝の空気が感じられる。ドゥームズディブックでは細かすぎでうんざりしたけど、こちらはちょうどよい。主人公が1888年に予備知識なしで送り込まれるので、読者は主人公と一緒にヴィクトリア朝時代の習慣に驚いたり、感動できる。

ヒロインのヴェリティが魅力的だ。「だれかがラテン語でしゃべって、意味を教えてくれないのはすごくむかつく」。訳者の大森望さんも巻末で触れているが、この台詞には大いに同感。幸い、私の周りには古典を引用する洒落た人物はいないが、小説の登場人物が古典を引用して、意味を説明してくれないのは、すごくむかつく(笑)

ヴェリティがタイムラグ(時差ぼけのタイムトラベル版)で主人公が魅力的に見えてしまったときのメロメロ感は、読んでてニヤニヤしてしまった。


ドゥームズデイブックと世界観は同じだけど、こっちは読んでいてただただ、楽しい作品。
コニーウィリスの別の作品も是非、読まねば。